在宅看取りの家族の負担は、終わりの見えなさによって少しずつ膨らんでいきます。「いつまでこの状態が続くのか」「自分が倒れてしまわないか」。そう感じながら、先の見えない不安を抱えて日々を過ごしているご家族は少なくありません。
今回は、在宅看取りで家族の負担が重くなる場面と、負担を軽くしながら家族としての時間を守るための考え方をお伝えします。
この記事でわかること
- 在宅看取りの家族の負担が終わりの見えなさで膨らんでいく理由
- 負担が重くなる4つの場面(認知症対応・医療的ケア・介護保険の限界など)
- 負担を放置した場合に起こり得ること
- 負担を軽くしながら家族としての関係を守るための3つの視点
在宅看取りの家族負担は終わりの見えなさで膨らむ

在宅看取りにおいて家族をもっとも消耗させるのは、ケアの手間そのものより「いつ終わるのか分からない」という感覚です。ゴールが見えないまま気力を保ち続けることは、想像以上に大変な作業です。今の頑張りがいつ報われるのか、何をどうすれば楽になるのかが分からないまま、毎日を積み重ねていくご家族を数多く見てきました。
看取りの期間が長引くほど、自らの時間や食事の時間さえ後回しにして本人に向き合い続けることになり、日に日に消耗が積み重なっていきます。「自分が自分でなくなる感覚」という言葉で、この状態を表現されるご家族は少なくありません。気力の糸が張りつめた状態が続くと、思わず本人に強く当たってしまい、あとになって後悔するというケースも実際にあります。
厄介なのは、この「終わりの見えなさ」自体に決まった長さがないことです。短いケースでは2週間から1か月程度で看取りを迎えることもあれば、長いケースでは数十年にわたって在宅でのケアが続くこともあります。この振れ幅の大きさこそが、「いつまで頑張ればいいのか」という見通しを立てにくくしている理由です。
在宅看取りで家族の負担が重くなる4つの場面

在宅看取りの負担は、先の見えなさだけでなく、認知症への対応や医療的なケア、費用の壁といった具体的な場面が重なることでさらに重くなります。負担が重くなる主な場面は、大きく4つに分けられます。
いつまで続くか分からない不安が疲労を積み重ねる
終わりの時期が見えないまま在宅看取りを続けると、休息を取るタイミングをつかみにくく、疲労がそのまま積み重なっていきます。「あと少しだから」と区切りをつけて頑張れる状況であれば、無理も利きます。
ただし、いつまで続くか分からない状態では、力を抜くタイミングを自分で決められません。

結果として、日々の小さな疲れが解消されないまま蓄積し、気づいたときには心身ともに限界に近づいているケースが少なくありません。
認知症の対応が特有の辛さを生む
認知症のあるご本人への対応は、身体的な介護とは違う特有の辛さを伴います。思いがけない言葉をぶつけられたり、食事の対応を突然求められたりと、予測できない場面の連続です。一生懸命尽くしても「ありがとう」をいってもらえないこともあり、その労いのなさ自体が家族の心をすり減らします。
「子どもだからやって当たり前」という気持ちで無理を重ね、疲弊してしまうご家族も少なくありません。実際、認知症の行動・心理症状(BPSD)が現れると介護そのものが難しくなり、家族や介護者の負担を増大させる大きな原因になるとされています。
中でも、突然大声を出したり歩き回ったりする行動面の症状には、薬の効果が限定的なことが多いとされています。そのため、対応がいっそう難しくなります※1。
医療的なケアが1日の時間を圧迫する
医療的なケアが重なると、1日の大半の時間が対応に取られてしまいます。夜間に何度も起きての対応、たん吸引、おむつ交換、夕食の食事介助など、1つ1つは短くても積み重なると大きな時間になるのです。
脳血管疾患などで嚥下が難しい場合は、食事の介助だけで1回あたり1時間半から2時間かかることもあります。1日6時間が食事対応だけで埋まってしまうケースも、実際にサポートしてきました。

介護保険だけでは足りない部分が出てくる
介護保険だけでケアを組み立てようとしても、どうしても足りない部分が出てきます。介護保険には要介護度ごとに1か月の利用上限(区分支給限度基準額)が定められています。上限内であれば費用の1〜3割の負担で済みますが、上限を超えた分は全額自己負担になります※2。
在宅看取りのように手厚いケアが必要な場面では、この上限に届いてしまい、計画通りに保険だけでは回らなくなることが少なくありません。
自費のケアであれば、費用はかかりますが時間を気にせず入れます。かかる分だけ、ご家族が休める時間、いわゆるレスパイトを確保できます。

在宅看取りで家族の負担を放置するとどうなるか
在宅看取りの負担をそのままにしておくと、介護の時間そのものが増え、家族の生活そのものが立ち行かなくなる場面が出てきます。起こり得る変化は、大きく2つに分けられます。
要介護度が上がるほど介護時間は終日に近づく
負担を放置して要介護度が上がっていくと、家族が介護に費やす時間はほぼ一日中に近づいていきます。実際、同居している主な介護者のうち「ほとんど終日」介護をしている割合をみると、要介護4で41.2%です。要介護5になると63.1%まで上がります※3。
負担が軽いうちに手を打たず先送りにするほど、後になって介護に割く時間そのものが増え、家族自身の生活を圧迫します。

介護離職という選択に追い込まれることもある
介護の負担が限界に達すると、家族が仕事を辞めざるを得ない状況に追い込まれることもあります。総務省の調査では、介護・看護を理由に前職を離職した人は年間で約10.6万人にのぼり、うち多くを女性が占めています※4。収入を得る手段を手放してまで介護に専念せざるを得なくなれば、経済的な余裕も失われ、負担を軽くする選択肢自体がさらに狭まってしまいます。
休める時間を確保するために自費のケアを選ぶか、家族が自らの時間を差し出すか。この二択に追い込まれる前に、負担を軽くする視点を持っておくことが欠かせません。
在宅看取りの家族の負担を軽くする3つの視点

在宅看取りの負担を軽くするには、時間や体制を整える視点を押さえておくことが助けになります。負担を軽くする視点は、大きく3つあります。
休める時間を確保することが最優先になる
負担を軽くするうえで最優先になるのは、ご家族自身が休める時間を確保することです。自費のケアであれば、時間を気にせず長く入れるため、その分だけご家族が介護から離れて休める時間、いわゆるレスパイトを用意できます。休める時間ができることで、はじめて次の対応に向き合う余力が戻ってきます。
自らの時間ができると本人の本音に気づけることがある
ご家族に自らの時間ができると、本人の本当の気持ちに気づけるものです。四六時中付き添っていると、本人もご家族に気を遣って本音を飲み込んでしまいやすいです。

少し距離ができることで、「一生懸命やってもらっているからこそ言えなかった」という本音を、看護師にだけ打ち明けてもらえるケースもあるのです。こうして聞き取った本人の気持ちをもとに、ケアの内容や方針を組み替えていく場合もあります。
生活支援まで頼れる体制を整える
介護そのものだけでなく、身の回りの生活支援まで頼れる体制を整えておくことも負担を軽くします。自費のケアなら、爪切りやベッド上での洗髪、外出の同行にも対応できるのが強みです。

ご家族との信頼関係ができた段階では、訪問前の買い物代行や身の回りの掃除まで引き受ける場合もあります。生活環境が整っていないと気持ちも荒れてしまうため、まずは目につくところだけでも整えるところからはじめることもあります。ご本人を優先したうえでの生活支援であることが、家事代行サービスとの違いです。
在宅看取りの家族の負担はだれに相談すればいい?
在宅看取りの負担で迷ったときは、まず地域の相談窓口を頼ることからはじめてください。お住まいの地域包括支援センターは、高齢者やご家族からの介護に関する相談を幅広く受け付ける総合相談窓口です※5。どこに相談すればいいか分からない段階でも、気軽に利用できます。

要介護認定を受けている場合は担当のケアマネジャーが日々の窓口になり、医療的なケアが必要な場面では訪問看護ステーションとの連携も欠かせません。
迷ったときに確認しておきたい相談先は、次の3つです。
- お住まいの地域包括支援センター(総合相談窓口)
- 担当のケアマネジャー(要介護認定を受けている場合)
- 医療的なケアが必要なときの訪問看護ステーション
私たちロイヤルナースも、こうしたご相談の受け皿の1つです。ICU・脳神経外科での経験を持つ看護師が、医療の安心感とホスピタリティの両方から在宅看取りに伴走します。
あらかじめ予定を組んだ夜間・深夜の訪問には、実際に看護師が伺える体制を整えています。突発の緊急コールへのご相談は、会員制サービス「ロイヤル倶楽部」にご加入いただいた方限定でのご案内です。
在宅看取りの負担は、一人で、あるいはご家族だけで抱え込む必要はありません。迷いを感じた時点で、お電話やLINEでぜひ一度ご相談ください。
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