高齢者の退院後に寝たきりを防ぐには、最初の1〜2週間を家族だけで抱え込まず、足りない部分を外の力で補うことが大切です。「退院は決まったものの、介護の経験がない」「夜のケアをだれが担うのか」。そう不安を抱えるご家族は少なくありません。
この記事では、退院後に寝たきりへ進みやすい理由と、家族の負担が集中する夜間のケアについてお伝えします。あわせて、日中の保険サービスで足りない場面と、保険外の看護師で補う方法も解説します。
この記事でわかること
- 退院後の最初の1〜2週間を、家族だけで抱え込まない理由
- 退院後に寝たきりへ進みやすい理由と、夜間のケアが家族に集中する背景
- リハビリの役割分担と、保険外の看護師で補う方法
- 入退院を繰り返さないために、相談先を持っておく意味
退院後の最初の1〜2週間は家族だけで抱え込まない

退院後の最初の1〜2週間は、介護の負担を家族だけで受け止めず、早い段階から周りと分け合うことが大切です。
この頃は、ご家族がもっとも不安になりやすい期間です。介護の経験の有無にかかわらず、早い段階で外のサービスや相談先とつながっておくと、負担を分け合いやすくなります。
高齢者が退院後に寝たきりへ進みやすい理由

安静の状態が続くと、筋力が落ち、関節が固くなり、寝たきりにつながる悪循環が生まれます。
廃用症候群(用語:体を動かさない状態が続くことで起こる二次的な障害)は、全身にさまざまな症状として現れます。東京都保健医療局のサイトに掲載の資料では、次のような症状が挙げられています。※1
- 筋力の低下・筋萎縮(用語:筋肉がやせて細くなること)
- 関節拘縮(用語:関節が固くなって動かしにくくなること)
- 起立性低血圧(用語:立ち上がったときに血圧が下がり、ふらつくこと)
- せん妄(用語:一時的に混乱した状態になること)
安静にして寝たままでは、筋力が1週間で10〜15%の割合で低下すると、同資料に記載があります。※1 廃用症候群は、高齢者では知らないうちに進行します。気づいたときには「起きられない」「歩けない」という状況も少なくありません。※2
体を動かさなくなると、筋肉がやせおとろえ、関節の動きが悪くなります。それがさらに活動性を下げ、場合によっては寝たきりにつながります。※2 平成9〜10年度の厚生労働科学研究でも、廃用から生活の不活発化への悪循環が、寝たきりの原因と指摘されました。※3
予防の基本は、できるだけ寝た状態を続けないことです。運動の内容や量は、医師や専門職に確認してください。※2
退院直後に家族の負担が集中する夜間のケア

退院直後は、病院で行っていたケアが夜間を中心に家族へ集まり、負担が大きくなる時期です。以下の2つの面があります。
夜間の痰の吸引やおむつ交換が家族に残る
夜間は、痰の吸引やおむつ交換といったケアが、家族に残りやすい時間帯です。退院直後の相談の中心も、夜間でした。
ある退院前の相談では、介護経験のないご家族が、痰の吸引が3時間に1回は必要な方を、どうしても自宅へ連れて帰りたいと希望されていました。日中は保険でサービスを組めても、夜の対応が難しい、という内容でした。なお、3時間に1回という頻度は、この相談ならではの事情で、だれにでも当てはまる基準ではありません。
おむつ交換は、保険の訪問介護の身体介護にも含まれています。※4 課題は、保険の時間や回数で足りない夜間を、どう補うかにあります。
病院で行っていたケアを家庭で続ける負担
病院では看護師などが交代で担っていたケアを、自宅では家族が少人数で続けます。
病院でやっていたことを家で行うのは、非常に大変です。ご家族にも、それぞれの生活があります。家族の努力だけで体力と時間を保ち続けるのは、難しいのです。
日中の保険サービスだけでは足りない場面

日中に保険のサービスを入れても、家族の負担が残る場面があります。以下の2つの例があります。
訪問が4〜5人交代で来て家族が疲れる
日中の保険サービスだけでも、人の出入りが重なり、家族が疲れてしまうことがあります。ある相談では、時間ごとに4〜5人が交代で来る状況でした。
人が入れ替わるたびに、ご家族が応対します。夜にも人が入れば、例えば老夫婦の場合は、妻がさらに疲れてしまいかねません。
低残渣食など毎日の食事づくりが難しい
低残渣食(用語:消化しやすく、食べ物のかすが腸に残りにくい食事)が必要な方の食事づくりは、毎日のこととなると家族の負担になります。
ある相談は、消化器の病気で低残渣食が必要な方のものでした。市販のものは口に合わず、家族が作るしかないものの、疲弊していて難しい状況でした。そのときは、保険のヘルパーに頼めない事情がありました。
自費の看護師で対応できるか、と問い合わせをいただいたことがあります。私は、栄養士ではないので栄養面をフルには管理できないとお答えしました。ネットや料理本の低残渣食のレシピに沿い、ご本人の好みを聞きながら、医師のアドバイスをもらって整える形なら可能です。
退院後のリハビリは専門職と看護師で役割が分かれる

退院後のリハビリは、専門職と看護師で役割が分かれます。以下の3つの点を整理します。
看護師は軽い関節拘縮予防や筋肉をほぐす範囲を担う
看護師が担えるのは、軽い関節拘縮の予防の運動や、リラクゼーションで筋肉をほぐす程度です。専門的なリハビリは、看護師が行うものではありません。
本格的なリハビリは理学療法士や作業療法士が担当する
本格的なリハビリは、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)の領域です。いずれも、運動や日常の動作の訓練を行うリハビリの専門職です。
保険で入ってもらうか、自費のリハビリを入れるかを選ぶことになります。リハビリのご要望は多く、よくご相談をいただきます。
公的保険のリハビリには日数や頻度の制限がある
公的保険のリハビリは、日数や頻度に上限があるのが特徴です。医療保険と介護保険は別の制度で、それぞれ定めが異なります。
例えば医療保険のリハビリテーションには、疾患ごとに標準的算定日数(用語:保険でリハビリを算定できる日数の目安)が定められています。運動器は150日です(令和元年9月の厚生労働省資料)。※5
必要なリハビリが保険で足りるかは、担当の医師やケアマネジャー(用語:介護サービスの計画を作る専門職)に確認してください。
足りない夜間は保険外の看護師で補う

保険で足りない夜間は、保険外の看護師を加えて補う方法があります。以下の2つの観点で整理します。
夜の吸引やおむつ交換を看護師に任せる
夜間の痰の吸引やおむつ交換など、保険の時間や回数で足りない部分を、自費の看護師にお任せできます。
ただし、医療処置を伴う内容は、医師の指示の範囲で行います。
まず話を聞くだけの相談からはじめられる
まずは、話を聞くだけの相談からはじめて構いません。いきなり契約を考える必要はありません。
まず知っていただき、信頼してもらえた段階で使っていただければ十分です。
サービスの利用には、重要事項説明(用語:サービスの内容や料金などを、契約前に文書で説明すること)などの手続きが必要です。
遠方の子が退院後の暮らしを決めるときの視点

親御さんの「自宅に帰りたい」という思いと、お子さんの不安は、両立させる道を探せます。以下の2つの視点があります。
最終的な判断は子が担うことが多い
私の経験では、最終的な意思決定は、お子さんが担うことが多いです。
お子さんが遠方に住んでいると、「親が自宅に帰りたい気持ちは分かるが、無理だろう。施設へ」と考えるのは自然なことです。遠方だからこそ不安が大きくなり、慎重になるのは当然でしょう。
お試しで使って様子を見る選択もある
遠方からでは見えにくい暮らしの様子を、一度の利用で確かめる方法があります。
まず一度ご利用いただき、様子を見たうえで、続けるかを決められます。
入退院を繰り返さないために相談先を持っておく
何かあったときに相談できる先を、あらかじめ持っておくことが、在宅の暮らしを続ける支えになります。
退院して自宅に帰る背景には、ご本人が自宅での生活を望む思いがあります。入退院を繰り返さないためにも、サービスの強化が欠かせません。ただ、保険だけでは足りない部分も出てくるものです。
うまくサービスを使いながら、何かあれば相談できる「お守りのようなツール」を持って過ごしてほしいと思います。介護は、終わりが見えないものだからです。
相談先は、担当のケアマネジャーや病院の相談員など、身近な窓口から探せるでしょう。
退院後の不安を話せる看護師に相談してみませんか?
退院の前後を問わず、まず看護師に話してみる選択肢があります。夜間など足りない時間帯のことや、気がかりに感じていることを、お話しください。
私たちロイヤルナースは、東京23区・多摩地域、神奈川(横浜・川崎・鎌倉・大和)で、自費(保険外)の訪問看護「ロイヤルケア」を提供しています。ご希望の場所へ伺って、お話を聞くこともできます。お電話(0120-051-551)で、お気持ちやご状況をお聞かせください。
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